ゴトウ ヨウコ   Gotoh Yoko
  五嶋 陽子
   所属   神奈川大学  経済学部 経済学科/現代ビジネス学科
    神奈川大学大学院  経済学研究科 経済学専攻(会計・財政コース)
   職種   教授
言語種別 日本語
発行・発表の年月 2010/01
形態種別 大学・研究所等紀要
標題 医療と税制
執筆形態 単著
掲載誌名 商経論叢・神奈川大学経済学会
巻・号・頁 45(2・3合併号),49-78頁
概要 医療をめぐる社会保障制度の整備と所得税制の各種所得控除がどのように国民の健康と傷病という不確実性と向き合うのかを自己負担と直結する医療費控除制度から精査する。医療費控除の適用範囲は国民医療費やOECD保健勘定の保健医療支出に包摂されない医療費を含む。同控除の規模は衆議院と参議院の両院の大蔵委員会及び予算委員会会議録から適用下限、限度額、項目対象の政治的決定によって拡充されてきた。医療費控除制度の実証分析から1998~2007年の間に合計所得からミドル・クラスが崩壊し、所得の二極化が進展したこと、医療費の申告人員はいずれの所得階級においても増加し、その増加率は低所得階級ほど高く、健康保険制度の変更が医療費控除の動機を創出していること、しかし地方税における医療費控除の申告実態と比較すると、所得税の課税最低限が地方税よりも高く設定されているため、医療費の所得控除が叶わなかったことがわかる。所得階級別に医療費控除の便益を推定し医療費控除のジニ係数への影響を見てみると、医療費控除は所得税の再分配効果を後退させる。昨今所得格差を背景とする税制を通じる所得再分配機能への期待に対し、所得に見合った消費水準の維持というシャウプ勧告の当初の意図を改めて確認する。