マツウラ サトコ   Matsuura Satoko
  松浦 智子
   所属   神奈川大学  外国語学部 中国語学科
    神奈川大学大学院  人文学研究科 中国言語文化専攻(歴史・文化)
   職種   准教授
発表年月日 2023/11/30
発表テーマ 手鈔彩繪《春秋七雄通俗演義列國志傳》與其周邊繪圖本
発表学会名 書頁邊縁:中國書籍史與文本政治國際學術研討會
主催者 台湾中央研究院
学会区分 国際学会
発表形式 口頭(一般)
単独共同区分 単独
国名 台湾
開催地名 台湾中央研究院中央研究院中國文哲研究所二樓會議室
開催期間 2023/11/30~2023/12/01
発表者・共同発表者 松浦智子
概要 手鈔彩繪《春秋五覇七雄列國志傳》(彩繪《列國》)という資料がある。本資料は、明の萬暦末期頃に坊刻《列國志傳》に基づき内府で制作されたと推定されるもので、小説研究にとって貴重な意味をもつが、本資料に関する先行研究は極めて少ない。一方、明の内府では、彩繪《列國》の他に、彩繪《唐玄奘法師西天取經全圖》や、彩繪《出像楊文廣征蠻傳》、彩繪《大宋中興通俗演義》といった彩繪通俗小説が、坊刻本などをもとに複数作られていた。
宮廷・内府は、一般的な尺度で見れば、「正統的な士大夫文化」が主要な位置を占める空間とも言える。そうした空間で、通俗的な白話文に繪圖を組み合わせた「卑俗」な小説が複数制作・受容されたのは、なぜだろうか。その手がかりとなるのが、彩繪通俗小説の周囲に広がる、その他の繪圖本群である。
明内府では、皇太子教育の為に献上された《帝鑑圖説》、《養正圖解》等の教科書や、坊間書肆から買い取った《閨範圖説》、《人鏡陽秋》他の勸戒書など、数多くの繪圖本が受容されていた。これらは皆、彩繪通俗白話小説と同じく白話文に繪圖を組み合わせる形式を持つ。
注目されるのは、こうした白話繪圖本の内容が、時に彩繪通俗小説の内容と重複するということである。本稿ではこの点に着目し、先行研究の少ない彩繪《列國》について、その周辺の繪圖本との関わりを検証する。これにより、彩繪《列國》が持つ諸機能を析出し、その制作・受容にどのような意味があったのか、その一端を明らかにした。